せっかくだから、『花水樹』の創刊号を開いてみると、発刊する理由が書かれている。
これは今から五十年前に中谷健太郎さんによって書かれたものだが、今の世界や日本の状況はもっと大きな岐路に立たされているから、目の前で語られているかの如く、迫ってくる。
「民意という文化の海は豊かになったのか」
それを考えるために、今また資料整理をしながら、語り合いをしていきたいと思う。現代はリモートという方法も生み出されて、遠く海外または地球外にいる人とも話ができるようだが、できれば同じ空間で適度な距離で、多様な生きものと共存しながら…。 (平野)
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「花水樹」を発刊する理由
こんど私たち由布院の自然を守る会が中心になって『花水樹』を発行する運びになりました。
どうしてそんなことを始めたかというと、私たちはいま由布院がたいへん大事な歴史的岐路に立っていると考え、いまこそみんで良い考えを出し合って由布院の将来を方向づけないと百年の計を誤ってしまうと考えるからです。
(中略)
つまり、由布院の町がどんな産業を持ち、どんな文化を形成しうるかということは、すなわち私たち由布院に住む者が、あなたが、私が、どんな産業を望み、どんな家に住みたいと思い、どんな食べ物を美味しいと感じ、どんな生き方を好ましいと考えるか、要するに私たちがどのように生きるかにかかっていると思うのです。
そういう町民全体の真剣な意思が積み重ねられ、みがきぬかれして、ひとつの具体的な指向を持ち始めた時、はじめてそれが行政という機関を通して実現するのです。
鯨のような果敢な動物でも潮がなければ泳げません。
どんなに有能な行政者でも、民意という文化の海が豊かに拡がっていなければ充分の航行はできないのです。
そしてこの『花水樹』という雑誌はその海を作るために発行されるものです。